硬直した思考は仕事をしづらくしてしまいます
人間は学習をすることができる生き物です。
若手の時期には依頼を受けても何をどんなふうに仕上げていけばよいかがわからずに効率の悪い方法であれこれ試すようにしていた仕事も、10年くらい続けているとすっかり慣れてしまいすぐに何をどんな手順ですれば簡単に終わらせることができるかということを直感的に判断できるようになります。
そうした過去の経験から新しく直面する事例も同様の手順で対応することができるようになることを「パターン化学習」と言います。
このパターン化はごく簡単に説明をすれば、動物の赤ちゃんが昔毒のある虫に刺されてケガをすることで、次に同じ虫に会った時にそれに近寄らないようにするといった学習方法と同じものです。
人間は年齢が高くなることで経験する事例も増えていくので、より少ないヒントからたくさんのことを判断することができるようになっていくことができます。
しかしこのパターン化学習はとても便利な反面で、そのことに慣れすぎてしまうことにより考え方が硬直化してしまいかえって仕事の効率を下げてしまうということもあります。
特に真面目な性格の人になると「以前はこうだったのだから今回もこうなるべきだ」という先入観が強くなり、その背後や周辺にある事例をすっぽりと見落としてしまうということもあったりします。
どんなに経験豊かなベテランでも、定期的に自分の思考方法に偏りや硬直がないかをしっかり意識してチェックするようにすることが大切です。
過度のマニュアル化が招く弊害
今は業務改善や透明化を目指す企業が増えていることから、何かとマニュアルを作成してその通りの手順で仕事をするようにされています。
確かに業務マニュアルは仮に人員が変わってもすぐに同じ対応をすることができ、かつミスを少なくすることができるという大変に便利なものです。
しかしその反面で硬直化したマニュアルはそのほかの手順での仕事の方法を許さず、それが時間の経過によりシステムが陳腐化してもそのまま形を維持しようとしてしまうこともあります。
最初に出した例えをもう一度使えば、過去に毒を持った虫に刺された経験がある動物が、同じ失敗をしないようにするためにその虫を避けるということを学習したとします。
ところがそのあと情報を集めてみると、その虫と少し形の違う毒虫がいたりするということがわかりました。
そこでその毒虫と同じ色をしたものはとりあえず避けた方がよかろうと、同じ色の木、同じ色の花、同じ色の動物などやたらめったら避けるようになってしまい、結果的にひどく行動できる範囲が狭くなってしまうなんてことになったらどうでしょうか。
多くの人はそんな行動をしている動物を「そこまで神経質になるなんてバカだな」と思うかもしれませんが、案外パターン化の蓄積が多くなりすぎたベテラン社員や大企業などでは同じようなことをしていることがよくあります。
仕事の効率を高めるには常に柔軟な発想を受け入れる
仕事の効率化というのは初期段階ならばパターン化が有効な手段となりますが、そのパターンが出そろった時点からはむしろそうではない方法の方が効率的になることが多くなっています。
業務マニュアルは一度作ったらそれで完成というわけではなく、常に改善をしていったり、例外を認める柔軟さをつくっていくことが重要になります。
自分がこれからしようとしている仕事は、過去の事例だけで決めつけていないかということを考え直してみれば自ずと本来するべき方法が見えてくるはずです。