不動産・建築業界全体は見通しが明るい
リーマンショック以来不動産や住宅関連業界は長く不況が続いてきました。
日本社会全体の不況もありますが、欠陥住宅や手抜き工事が問題になった影響も出たようです。ですがここ数年は急激に落ち込んだ住宅建築件数も少しずつ回復をしてきており、地価や不動産取引価格も上昇し活気を取り戻してきた感じがありました。
しかしそれに冷や水を浴びせかけることになったのが2014年の消費増税で、2009年度から2013年度にかけて緩やかに増加してきた住宅着工戸数は再び減少に転じ、2014年度の新築住宅着工戸数は前年度比10.8%減とリーマンショック以後初めての減少となってしまいました。
当初はこの落ち込みも消費増税前の駆け込み需要の反動として一時的なものと楽観視をされていたのですが、実際にはそこからの回復はなかなか先が見えず、結果的に消費増税後の住宅メーカーのうち営業増益を達成できたのは大手住宅メーカー数社だけという厳しい状況となりました。
ただし2015年の後半からは少しずつ上昇傾向も見られるようになっており、慌てて実施された住宅取得支援策も効果が出始め2016年にかけては着工数が緩やかに上昇してきています。欠陥住宅は施主の意識向上により、内覧会で複数人が細かくチェックを行う等して対応されています。
国による空き家対策が新築戸数増加になる
2015年に実施された不動産業界にとって大きな政策の一つが「空き家対策特別措置法」です。
これは平成26年(2014年)11月に成立し、翌年5月から完全施行されるようになったものです。
以前より高度成長期からバブル期にかけて建てられた住宅が次々に老朽化し、空き家となってしまっていることが問題視されてきたのですが、この法律が成立したことにより空き家率が全国規模で公表されることになるとともに、各自治体が独自に対策をとることができるようになっています。
空き家というのは不動産資源が眠ったままになるだけでなく、防犯や防火に大きな影響を与えるものとして急ぎ対策が求められてきました。これまではあくまでも持ち主に処置をお願いするという形でしか対応できなかったところを、この法律ができたことによりより強い権限で地方自治体が対処できるようになりました。
これはそれまで空き家の持ち主であった人にとって、それまで建物のある土地に対して優遇措置がとられてきた固定資産税が認められなくなり、空家を放置しておくと空家撤去費用と固定資産税がダブルでかかってくるという非常に困ったことになってしまいます。
そのため法律施工時より空き家を有効利用するために建て替えやリフォーム、売却などを行う件数が増えておりこれが不動産業界にとってのカンフル剤の一つとなっているようです。
ただし、そうした空き家処理のスピード以上に空き家になる建物が増加しているという事情もあり、今後2019年をピークに空き家件数は増えていくことが予想されています。
ですのでこれからはそうした空き家や空き地をどのように活用していくかというところに各住宅メーカーの手腕が問われます。
リフォーム住宅は相変わらず人気
新規住宅着工数が厳しい状況に置かれている一方で、緩やかながら堅調に成長をしているのがリフォーム市場です。
住宅リフォームの件数は消費増税の影響の大きかった2014年にこそ減少となりましたがその幅は小さく、2015年には再び上昇傾向を取り戻しました。
リフォーム件数が増えるこは住宅メーカーだけでなく住宅設備メーカーにも大きな影響を与えることとなり、現在では大手設備メーカーが連携して材料を調達できるようなしくみが整えられています。
ただし今後さらに増税がされることによる国内市場の落ち込みが懸念されていることもあり、大手住宅設備メーカーの多くが海外での市場開拓に力を入れています。リフォームに需要があることからわかるように、消費者は家を選ぶ際にもできるだけ節約をしたいという傾向があります。
新築物件においても、ローコストの注文住宅などの需要が高く、節約志向の表れが見て取れます。